印刷 | 通常画面に戻る |

ナスカ文化

アンデス文明で一時期繁栄した地域的な文化。現在のペルーの高原地帯に生まれ、独特の土器、織物と謎の地上絵で知られている。

 モチカ文化と同じ時期、紀元後100~500年頃、ペルーの南部海岸地方に生まれた、いわゆるアンデス文明の開花期の地域文化の一つ。トウモロコシなどの栽培と漁業、狩猟を行っていた。最も発達させたのは多彩色彩・造形と絵柄のモチーフ(魚や動物)を有する土器と、木綿と毛織物の織布技術である。有名な地上絵をつくったのがナスカ人である。これは占星術や天文観測と関係があると考えられているが、まだその意味は謎である。ナスカ文化は500年頃、ティアワナコ文化が全アンデスに広がる中で忽然と姿を消す。

Episode 地上絵以外にもあるナスカ文化の謎

 ナスカの地上絵は岩石砂漠の明るい色の台地に、黒い小石を並べて描かれている。多くの銭は平行だが一部のものはいろいろ角度を変えて交差し、放射線状や、動物の像が描かれている。マリヤ・レーチェという長い間その謎に取り組んできた学者の説は、23本の放射線状の2本は夏至の線であり、1本は秋春分の線であるという。大部分の線の長さは182mまたはその半分、ならびに4分の1である。別の単位は26mで、これらはナスカの人びとが用いた距離の単位であろう。ナスカの地上絵は有名だが、他にも「柱の場所」または木のストーンヘンジといわれる謎がある。これはナスカ川の谷の中心部にあり、砂交じりの平らな土地に木の幹が一ヶ所に固まって立てられている。大部分が2mおきに12列に並んでいる。そこからは墳墓は見つかっておらず、何の遺跡か謎である。<泉靖一『インカ帝国』1959 岩波新書 p.68-75> 
印 刷
印刷画面へ
書籍案内
泉靖一
『インカ帝国』
1959 岩波新書