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役/徭役・正役・雑徭

中国の税制での無償の労働で納付する税の形態。隋唐では雑徭が重い負担であった。

 中国の税制度の中で、公権力に対して人民が負う、無償の労働提供(労働地代ともいう)のこと。隋唐の律令制度のもとでは、均田農民(口分田を給付される農民=自作農)に対し、租調庸制の税制が定められた。租・調などの現物(生産物地代)の他、中央官庁での年間20日間の労働である正役(通常は絹または麻布を代納する=庸)と、地方官庁での年間50日(40日説もあり)の労働である雑徭(代納なし)があり、農民の大きな負担であった。また府兵制のもとでの兵役も一種の労働地代であった。これらを併せて、役(徭役、力役などとも言う)である。

租税形態の変化

 役(徭役)はおそらく都市国家段階からの最も原初的な税の形態であり、直接人民を使役する古代国家に広く見られるものである。都城や長城、運河などの造営はこのような労働でまかなわれたと思われる。税の主体は次第に生産物(現物納)に移り、さらに貨幣流通に応じて金銭納(貨幣地代)が始まり、現代においては基本的には徭役は無くなっている。中国史でも土地税(地代、地税)である現物納と人頭税である徭役(労働地代)の二本立ての税体系は、租庸調制がくずれた両税法のもとでも長く続き、徭役が地税に組み込まれるのが明の一条鞭法の時であり、清の地丁銀で徭役は完全に消滅する。
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