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アール=ヌーヴォー

19世紀末から20世紀初めフランスを中心に起こった「新芸術」の流れ。

19世紀末から20世紀の初めの「ベルエポック」と言われた時期に、主としてにヨーロッパで起こった「世紀末芸術」の一つが、フランスを中心とした「アール=ヌーヴォー」(新芸術、の意味)の流れであった。その原型は、ゴシック=リヴァイヴァルを思想的な背景とし、産業革命以降の大量生産品を否定して、中世的な職人による手作業の再生を提唱したイギリスのウィリアム=モリスの「アーツ=アンド=クラフツ運動」による家具・食器・ポスター・壁紙などの分野の大革新にあった。古くから使われていた木や石といった素材に鋼やガラスといった新しい素材を組み合わせ、新しい造形をつくり出した。うねりのある木の家具など曲線的造形に特徴を持っている。

代表的な作家

 アルフォンス=ミュシャ(1860~1930)はチェコ人で、ポスター、挿絵など幅広いイラストレーターとして多くの作品を残し、花・草・樹木・昆虫・動物などのモチーフを用いて当時の人びとに自然界の美を気づかせた。彼の登場でイラストレーターの美術家としての価値が高まった。建築分野では、ベルギーのソルヴェイ邸を設計したオルタ、パリ地下鉄アベス駅入口を設計したギマール、スペインのバルセロナにあって現在も未完成であるサグラダ=ファミリア聖堂(聖家族聖堂)を設計したガウディらが知られている。
 エミール=ガレやドーム兄弟のガラス工芸、ルネ=ラリックらの宝飾品も人気が高い。1910年代なかばごろから、この様式のデザインはコスト高であったために次第に敬遠され、かわって大量生産との調和をはかり、幾何学的なデザインが主流となったアール=デコ様式が普及した。アール=デコ様式の建築は、日本の対象から昭和初期の建築にも大きな影響を与えた。

同時期の世紀末芸術

 ドイツ・オーストリア地域ではアール=ヌーヴォーと同様の世紀末芸術が運動が起こり、「ユーゲント=シュティル(青春様式)」やミュンヘン・ベルリン・ウィーンに「分離派」が登場した。ロシアではロシア=アバンギャルドが生まれ、文学・美術・建築・演劇などのあらゆる分野で運動が広がったが、とくにストラヴィンスキーの「春の祭典」に基づくパリでのバレエ公演が賛否両論の渦を巻き起こした。このほか、イギリスをはじめとするヨーロッパ各地に新しい作風を試みる人びとが登場した。<2010年度 歴史能力検定1級 第4問 問題文より引用>
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