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シャクンタラー

4~5世紀のグプタ朝で、サンスクリット語で書かれたインド古典を代表する傑作戯曲。カーリダーサの作。

 4世紀末~5世紀はじめグプタ朝の全盛期チャンドラグプタ2世の宮廷で活躍したカーリダーサの書いた戯曲。サンスクリット語で書かれており、インド古典文学=サンスクリット文学の最高傑作といわれる。シャクンタラーは主人公の姫の名で、純情可憐であるとともに誇りを捨てない女性として描かれている。

シャクンタラー姫の物語

 『シャクンタラー姫』は、岩波文庫の辻直四郎訳で読むことができる。歌舞伎を思わせる舞台劇で、台詞も七五調で読んでいても楽しい。歌舞伎に翻案して上演したら、坂東玉三郎のシャクンタラー姫、松本幸四郎のドフシャンタ王などが想像できる。
 狩りに出かけたドフシャンタ王は、修行者の苦行林に迷い込み、偶然、仙人の養女シャクンタラーを見かけ、その美しさに一目で惹かれる。その台詞はこんな風だ。
 木の皮衣 肩の辺の 細きゆいめに むすばれて まろき乳房の たかまりを 蔽いかくせば あやなくに 若さみなぎる この姿 おのずからなる いみじさを 示しもあえず 色あせし 木の葉に花の 埋ずもるるごと・・・
 何度も苦行林を訪ねた王はついに思いを遂げて姫と契り、夫婦の約束の験に名前を彫った指輪を与える。ところがふとしたことから姫は指輪を川に落としてしまう。養父の仙人の許しを得て、苦行林を出た姫は、王宮を訪ねる。ところが姫を迎えた王は、王妃の手前、姫と約束した覚えはないと迎え入れようとしない。証拠の指輪をなくした姫は、泣く泣く苦行林に戻るしかなかった。そして舞台は後半に入っていく。最後はハッピーエンドに決まっているのだが、そこに至るまでのドラマはうまく出来ており、王と姫の心理劇が展開される。
 『シャクンタラー』は近代ヨーロッパに紹介されたサンスクリット文学の最初のものの一つで、1789年に最初の英訳が出され、ドイツ語、フランス語にも翻訳された。ゲーテが高く評価し、その『ファウスト』のプロローグにその影響の跡をとどめている。フランスではコレージュ=ド=フランスでのサンスクリット文学研究の隆盛をもたらした。<カーリダーサ/辻直四郎訳『シャクンタラー姫』1977 岩波文庫>
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カーリダーサ/辻直四郎訳
『シャクンタラー姫』
1977 岩波文庫