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鄒衍

戦国時代の諸子百家の一つ陰陽家の始祖。陰陽五行説などを説いて、後の中国人の世界観や歴史観に大きな影響を与えた。

 すうえん。戦国時代の斉の人。陰陽五行説を説いて陰陽家の始祖とされる。
 あらゆる物事、自然界から人間世界にいたるまで、すべて陰と陽の働きによって生じ、消えていくと考えた。世界の本になる元素は、木・火・土・金・水の五つであり、それぞれで表せる五つの徳が自然界も人間社会も動かしているとした。これを陰陽五行説と言い、中国における王朝の交替もこの五徳がめぐっていることで説明できるという。戦国時代には鄒衍の学説を信奉する人びとは陰陽家と言われるようになり、その学説である五行説は斉王や魏、燕、趙など戦国諸侯に取り入れられるようになり、さらに秦の始皇帝も採用した。その後も王朝が交代するときに五行説から説明するという、一種の循環史観が生まれた。やがて民間においても、陰陽五行説で過去を解釈し、将来を予想するようになった。
 また鄒衍は中国の地理的な理解においては九州に分かれているとし、世界はその9倍、つまり81州からなるとする大九州説を唱えた。この地理学説は未知の世界を想像する際に用いられ、後の神仙思想などが生まれる前提となった。これらの鄒衍の思想は、古代中国の一種の宇宙論、自然哲学、世界観であり、ギリシアで言えば、イオニア自然哲学に比することも出来るのであり、無視できない影響力を持っていた。
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