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アメリカ合衆国大統領

アメリカ合衆国憲法で定められた、国民が選出する国家元首で行政府の長。国民の直接選挙である一般選挙と、間接選挙である選挙人選挙の二段階選挙で選出される。任期は4年、現在では三選は憲法で禁止されている。

 President アメリカ合衆国の元首であり、行政府の長でもある。また軍の最高司令官であり外交の責任者でもある。アメリカ合衆国憲法では厳格な三権分立が定められているが、大統領は、議会に対しては拒否権を持ち、最高裁判所の裁判を任命するなど、強力な権限を持つ。その任期は1期が4年で現在は2期までとされている。大統領は裁判所の違憲審査、議会による弾劾裁判などによってその権力をチェックされる規定もあるが、議院内閣制での行政権に比べ、強力な権限を持つと言える。その大統領が執務するのがワシントンの通称ホワイトハウス(1800年から)。2017年1月就任したトランプ大統領は第45代となる。

大統領の任期

 再任については規定はなかったが、初代のワシントンが2期まで終わり、3期は不適当であるとして自ら大統領選に出馬しなかったことから、2期までと言う伝統ができた。その後、グラントとセオドア=ローズベルトが3選を試みたがいずれも実現しなかった。フランクリン=ローズベルトだけが第二次世界大戦という特殊事情と言うことで4選までいったが、1951年に憲法修正22条で明確に3選は禁止された。

大統領の選出

 4年ごとの閏年に行われ、11月の一般投票による一般選挙と12月の選挙人による選挙人選挙が行われる。このように間接的な選挙法だが、州ごとに一般投票で多数を獲得した政党がその州の全選挙人を獲得するユニットルール・システムの慣行があり、実質的には一般投票による直接選挙と言うことができる。なお、第3代のジェファソンまでは投票の過半数を得た中の最多票獲得者が大統領、次点が副大統領とされたため、正副大統領が違った政党に属してしまうことがあったので、1804年の憲法修正12条で選挙人は投票時に大統領と副大統領を指定して投票することとなった。
 アメリカ大統領選挙の最大の特徴は、一般選挙と選挙人選挙の二段階になっていることである。選挙人は州(50州+ワシントンDC)ごとに数が決まっており、一般選挙で勝った方が総取りする方式(メイン州とネブラスカ州だけは分配方式)で選挙人選挙が行われる。この制度から、時にきわどい接戦になることもあり、2000年の共和党ブッシュ(子)と民主党ゴアが競った大統領選挙がその例であった※。2016年選挙においても、民主党ヒラリー=クリントンが6580万票、共和党トランプが6297万票であったが、選挙人選挙でトランプが304票、ヒラリーが227票でトランプの当選となった。
※2000年大統領選挙 11月7日に行われた大統領選挙で、フロリダ州の一般投票でブッシュ候補が537票差で勝ったが、ゴア候補との得票差が規定の0.5%以下であったため、集計し直しが行われることとなった。ところが再集計の方法をめぐって両陣営の見解が分かれ、差止め訴訟を互いに行ったため混乱し、連邦最高裁の判断に委ねられた。すでに選挙人選挙が14日に迫っていたので、12月12日、最高裁は再集計は無理と判断して再集計を禁止し、フロリダ州州務長官(共和党員)の裁定した当初の票差でブッシュの勝利と判定した。これによってフロリダの選挙人票すべてがブッシュの得票となったため、選挙人投票でブッシュ271票、ゴア266票(つまり5票差)でブッシュの勝利となった。なお、一般投票ではブッシュ50,45万票、ゴア5,099万票でゴアが上まわっていた。
 このとき最高裁の9人の判事の内、ブッシュに有利な判断に賛成したのは5人でいずれも保守派(共和党より)で、リベラル派と言われる民主党寄りの判事は4名は反対した。ここも1票差の僅差だった。このように最高裁が政治色の強い判断をしたことに不信感が残った。しかし、最高裁の判定がでたことを受けてゴア候補は「認められないが受け入れる」と表明、敗北宣言を行ってブッシュに祝福の電話を送っって決着がついた。

大統領の継承

 なお大統領が任期途中で死亡あるいは退任した場合には副大統領が昇格して残りの任期を努めるのが慣行となっていたものを、1967年の憲法修正25条で正式な憲法条項として確定した。現在まで任期途中で死亡した大統領は、第9代ハリソン、12代テーラー、16代リンカン、20代ガーフィールド、25代マッキンリー、35代ケネディがおり、退任した大統領に37代ニクソンがいる。
継承順位 アメリカ大統領の継承順位は憲法修正25条と数次にわたって制定された大統領継承法によって細かに定められている。アメリカ大統領が死亡、辞任した場合は、副大統領に次ぐ継承順位は、下院議長、上院議長、上院臨時議長、国務長官、財務長官、国防長官、以下設置順に各省の長官となる。
 問題は病気や精神異常など職務遂行不能になった場合であるが、まず大統領自身が上院臨時議長(というのは上院議長は副大統領だから)と下院議長にその旨通告すれば、副大統領が「代行」することが認められている。本人が意思表示できない場合は、副大統領と各省長官の過半数などの通告で副大統領が代行する。大統領が自分は不能でないと通告した場合は議会に持ち込まれ、3分の2の多数で決定すれば大統領は職務に復帰できず、副大統領が代行する。<飯沼健真『アメリカ合衆国大統領』1968 講談社現代新書 p.24->

大統領の拒否権

 アメリカの大統領は国民から直接選ばれるので、イギリスや日本の議院内閣制での首相(議会から選出され、議会に責任を持つ)とは違い、議会の多数派と異なる「ねじれ」が生じ、議会と対立することことがよくある。その場合、大統領には議会通過法令に対する拒否権が認められている。大統領は法案への署名を拒否し、発議した議会に差し戻すことができる。議会は3分の2以上で再議決することが出来るが、その可能性は少ないので、大統領拒否権は大きな権限となっている。

大統領弾劾裁判

 大統領の犯罪行為に対しては、下院が過半数で弾劾裁判を発議し、上院において弾劾裁判が行われ、3分の2以上の議決で有罪とされれば、罷免される。 → ウォーターゲート事件

NewS トランプ弾劾裁判

 1921年2月13日、アメリカ合衆国議会上院で行われた、トランプ前大統領に対する弾劾裁判は無罪となった。1月6日の暴徒による議会襲撃事件でのトランプの言動が「反乱の煽動」にあたるかどうかが問われたが、陪審員役を務める上院議員の票決の結果、民主党50人、共和党7人の計57人が有罪、残りの共和党43人は無罪と判断、弾劾裁判での有罪は出席議員の3分の2以上の賛同が必要であるため、無罪となった。無罪と判断した共和党議員の中には、トランプの行動は有罪にあたるが、既に退任しているので有罪には出来ないと表明する者もあった。
 無罪の判決が出たことに対してトランプ前大統領は、弾劾裁判を「史上最大の魔女狩りの一部だ」と非難し、大統領選挙で自分に投票した7500万人近い人がいたこを忘れられない民主党側の報復に過ぎないと述べた。<朝日新聞 2021/2/15記事による 弾劾裁判が無罪で決着を迎えたことによって、1ヶ月以上続いたトランプ劇場はいったん終わりを迎えた。
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書籍案内

飯沼健真
『アメリカ合衆国大統領』
1968 講談社現代新書

明石和康
『大統領でたどるアメリカの歴史』
2012 岩波ジュニア新書