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偶像崇拝の否定

イスラーム教の根本的な宗教思想。

 偶像は、神仏を人間の手で、石や粘土、金属、木など様々な材料を使って像にしたり、絵に描いたりしたもの。またそれを崇拝することが偶像崇拝。イスラーム教では、偶像は人間が作ったものにすぎず、神そのものではないから、それを崇拝することは間違えている、として厳しく禁止している。そのために、イスラーム美術の特徴は、絵画や彫刻が発達せず、アラベスク模様ともっぱらコーランを美しい書体で書き表すことが尊ばれた。13世紀にモンゴル勢力によって西アジアが征服された結果、中国絵画の影響が強まり、イル=ハン国からは細密画(ミニアチュール)が発達し、ティムール帝国、ムガル帝国で独自の発達を遂げたが、ヨーロッパのような写実的な美術はイスラーム世界では生まれなかった。 → イスラーム美術の特徴

聖像崇拝問題

 キリスト教や仏教も、本来は偶像崇拝を否定していたが、布教の際の利点や、国家宗教としての性格が強くなると、聖像や仏像が作られるようになった。イスラーム教がキリスト教のそのような偶像崇拝を批判したことから、それに直面した東方キリスト教世界のビザンツ帝国で起こったのが聖像崇拝問題であった。726年のビザンツ皇帝レオン3世聖像禁止令を出すと、ローマ教会はそれに反発し、そこから11世紀までにキリスト教会の東西分裂という事態が進行していく。
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