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ジョン=ボール

中世イギリスで起こった農民一揆ワット=タイラーの乱を指導した僧侶。

 “アダムが耕しイブが紡いだとき、だれが領主だったか。”は、ウィクリフの教えを広めようとした僧侶ジョン=ボールが説いた言葉。人間の平等を説き、封建社会を批判し、農奴の解放を主張したかれの教えは、イギリスの農民に広がり、ワット=タイラーの乱の引き金となった。気狂い僧とされて捕らえられていたが一揆軍によって救出され、その先頭に立って農民を励ました。反乱軍が離散した後、捕らえられて処刑された。

ジョン=ボールの説教

 当時の記録をもとにしたジョン=ボールの説教を復元すると、次のようになる。
(引用)『皆の衆よ、イギリスでは、財産が共有にならない限り、また、農奴も殿様もなくなって皆が平等にならない限り、世の中がうまく行く道理はないし、また決してうまく行かないだろう。そもそもなぜ、わしらが領主と呼んでいる連中は、わしらよりえらい主人なのか? わしらは皆、ただ一人の父とただ一人の母、アダムとイヴから出ている。何を根拠にして彼等はわしらの上におさまって領主づらをしていられるのだ。その理由といえば、自分らの消費するものをわしらに耕し作らせるからというほかには無いではないか。彼等は天鷲絨を着、わしらは粗末なものを着ている。彼等には葡萄酒があり香料があり上等のパンがある。わしらには裸麦と糠と麦藁しかない。しかも水を飲んでいるのだ。彼等は善美を凝らした館で悠々と暮しているのに、わしらは畑にあって雨と風に曝されている。しかも彼等の生命の糧は、とのわしらが耕してつくり出さなければならないのだ。・・・・さあ、行って王様に会おうではないか。王様は若い。わしらが農奴となって束縛されているととを、王様に陳情しよう。どうにかしてもらいたい、でなければわしらが自ら救済の道を講ずるから承知してもらいたいと、王様に申上げようではないか。』<アンドレ=モロワ『英国史』水野成夫・小林正訳 上 新潮文庫 p.245>
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