印刷 | 通常画面に戻る |

コアビタシオン

フランスの第五共和制憲法の下での大統領と首相が保守と革新から出る保革共存の政治のあり方。1980~90年代に見られた。

 1980~90年代のフランスミッテランシラク大統領のもとで出現した保革共存の政治体制のことをコアビタシオン Cohabitation という(フランス語で同居の意味)。大統領と首相が、保守と革新の違った基盤を持って共存する現象であり、1986年に社会党のミッテラン大統領の下で保守派のシラクが首相となった例が最初で、逆に1997年には保守派の大統領シラクの下で社会党のジョスパンが首相となった。これは国民の直接選挙で選出された大統領が首相の任命権を持つが、議会は首相の不信決議が出来るために議会選挙で多数を占めた党派から首相を指名せざるを得ないという、フランス第五共和政憲法の規定によるものである。第五共和政憲法は大統領制と議院内閣制の両面の要素を取り入れている。大統領と首相が左右異なった勢力によって占められることは政治の不安定につながりかねないが、フランスでは「大統領は国家の最高責任者であると同時に火急の際の仲介者として捉えられ、大統領は軍事・外交を、首相は内政を主に担当する」(政治学者デュヴァルジェの定義)という「原則」が自然に生まれ、運用された。<渡辺啓貴『フランス現代史』1998 中公新書 p.230>
印 刷
印刷画面へ
書籍案内

渡辺啓貴
『フランス現代史』
1998 中公新書