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新思考外交

1985~91年までのソ連のゴルバチョフ政権が、西側との相互依存の重視、他の社会主義国との対等の関係などを掲げた新しい外交方針。

 1985年に成立したゴルバチョフ政権が掲げたソ連の新しい外交理念。従来の米ソ二大国の戦力均衡を前提とした冷戦時代の外交を否定して、大胆に方針を転換させ、一気に東西冷戦を終わらせることとなった。

意味

 「新しい思考」とは次のような新しい外交の軸に転換することを意味した。
  • アメリカなど西側との経済的な相互依存の必要、世界経済の一体性を認識する。
  • 西欧(EC)と日本というアメリカ以外の勢力との関係を重視する。
  • 中国との関係を正常化し、アジア・太平洋地域の一員となる。
  • NIEsやOPEC諸国などの新興勢力の出現を認識する。
  • 世界共通(グローバル)な経済に対応し、環境問題など共通課題に取り組む外交。

背景

 米ソ二極論的世界像である「新冷戦」が行き詰まる中、中距離核戦力の開発などの新しい軍備拡張がソ連財政を圧迫し、経済成長を阻害するものと認識されるようになった。83年頃から改革派の国際政治学者や科学者、経済学者などの中からソ連外交を見直し、相互依存的な世界観、グローバルな環境問題などを重視する「新しい思考」が提唱され初め、ゴルバチョフ書記長がそれを採用し、新政権の外交理念とされるに至った。

実施

 ソ連が外交政策を転換させたことは、従来の核抑止論にもとづく核開発競争は克服され、新冷戦で冷え込んでいた緊張緩和(デタント)を復活させることとなった。ゴルバチョフ政権のもとで外相はグロムイコ(ミスター・ニェットと言われ、アメリカに対し何でも反対することで有名だった)からシュワルナゼに替わり、86年から具体化された。

成果

 ゴルバチョフ政権の新思考外交の具体的な成果は次の諸点が挙げられる。 <以上、ゴルバチョフ政権については、下斗米伸夫『ゴルバチョフの時代』1988 岩波新書 などを参照>
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書籍案内

下斗米伸夫
『ゴルバチョフの時代』
1988 岩波新書