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BRICS

2009年、ブラジル、ロシア、インド、中国の4国で発足、2011年に南アフリカが加わった国家協議体。世界人口の約4割を占める協力機構として、アメリカ、EC、日本などのG7に対抗する経済協力を進めている。2023年の首脳会議で新たに6カ国が加入した。

 1990年代に経済面で急成長した新興工業経済地域(NIEs)が1990年代後半に安定期に入ったのに対し、2000年代から、ブラジル(B)、ロシア(R)、インド(I)、中国(C)の4国が世界経済でしめる重要度が急速に増したため、頭文字を取ってGRICs(ブリックス)と言われるようになった。この四カ国は、多くの人口と資源に恵まれている点で共通しており、NIEs(韓国、香港、台湾、シンガポール)とはまったく異なる潜在力を秘めているため、従来の世界経済を主導していたアメリカ、EC、日本にとって新たな脅威となる存在と意識されるようになった。
 2009年、ブラジル、ロシア、インド、中国の四国が初めてBRICs首脳会議を開催、2011年には南アフリカ共和国が加わり、五カ国で構成されるBSICSとなった(Sが大文字となった)。インドと中国という人口超大国が加わっているため、この五カ国で世界人口の約4割をしめ、世界の国内総生産(GDP)では約26%となっているので、新たな国際協力機構としてその存在感を強くしている。<朝日新聞 2023/8/22 記事などにより構成>

NewS BRICS首脳会議開催

 BRICSは毎年、首脳会議を開催、協力態勢の強化を図っており、コロナウィルス蔓延中の20,21,22の三年間はオンライン会合であったが、2023年8月22日から南アフリカのヨハネスブルクで4年ぶりの対面での開催となった。22日にはビジネスフォーラム、23日は本会議、23日には加盟国以外の首脳も加えて拡大会合が開催された。
 今年はロシアのウクライナ侵攻以降の戦争状態が続いている中での開催であるのでロシアの動向が注目されたが、プーチン大統領は国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているため、オンライン参加にとどまり、代わりにラブロフ外相が出席した。ロシアのペスコフ報道官は、完全な参加に変わりはないと言っている。しかし、ロシアのウクライナ侵攻を巡っては他の4国首脳の姿勢に差があり、ロシアに対する支持か非難か、いずれか一方で一致した態度を取ることはなかった。その思惑に隔たりがあるものの、アメリカ中心の先進7カ国の国際秩序に対抗するための協力を強め、また加盟国を増やしていく方向でまとまっている。
 ロシアはアメリカ・NATOのウクライナに対する軍事支援をファシズム勢力に力を貸しているという従来の主張を続け、他の4国へのウクライナへの支援を牽制し、ロシア制裁に加わらないよう働きかけた。その背景には人口急増に悩むインド・中国が、ロシアからのエネルギー輸入に依存する度合いが強くなっていることがあげられる。
 中国も習近平みずから出席して米欧に対抗できる連携の強化を呼びかけたが、そのためにはBRICSへの加盟国の拡大を重視している。中国は以前から加盟国拡大を優先させ、ウクライナ情勢には深く踏み込まない、という姿勢を取っている。またインドとは国境問題を抱えており、全面的な和解には至っておらず、駆け引きを続けることになる。
 ブラジルのルーラ大統領はロシアのウクライナ侵攻を国際法違反であるとして国連の非難決議にも賛成しているが、一方でアメリカ・西欧主導のロシア制裁にも強く反対している。首脳会議ではドル覇権に反対してそれに代わる共通通貨の創設や各国が共同出資するBRICS開発銀銀行設立を主張している。
 インドのモディ首相は、アメリカ・EU・日本との経済関係を重視、日米豪の経済協力枠組みの「クアッド」にも参加しているので、対決よりもバランスを重視した外交を進めている。ロシアとは関係が深く、ウクライナ侵攻後も武器や石油の輸入を続けている。またインドはグローバルサウスのリーダーを自認しており、G20へのアフリカ連合代表の参加などを提唱している。
 南アフリカ共和国のパンドール外相は首脳会議のテーマを「BRICSとアフリカ」と位置づけ、アメリカの対ロ制裁によってアフリカ諸国は直接に影響を受けていると批判、BRICSと新興・途上国からなる「グローバルサウス」の結束を主張した。
新たに6カ国加盟へ BRICS首脳会議最終日の8月24日、南アフリカ共和国のラマポーザ大統領は、新たな構成国としてアルゼンチン、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア、エジプトの6カ国を加えると発表した。BRICS拡大については熱心な中国と、慎重なインドの差があったが、今回の拡大は全会一致で了承された。
 ウクライナ問題に対してラマポーザ大統領は「紛争の平和で公正な解決のためには、外交、対話、交渉、国連憲章の諸原則の遵守が必要」と表明、ブラジルのルーラ大統領も「団結して早期の解決と公正で永続的な平和のために効果的に貢献する用意がある」と表明した。習近平主席は「当面の急務は和平交渉を促し、戦闘を止め、平和を実現することた。火に油を注いではならぬ」と指摘した。当のプーチン大統領はオンラインで参加、「西側の援助を受けたウクライナ現政権の迫害に苦しむ(ロシア系)住民の側に立って戦っている」という従来の主張を繰り返した。
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