印刷 |  通常画面に戻る | 解答表示 |    

解説のページ ノート目次へ

 目次へ MENU

序章 先史の世界

先史の世界 ▶ 

「見だしリスト」クリックで各見出しにジャンプ。
「ノート」をクリックするとノートのページにジャンプ。
ア.人類の進化 ノートへ

補足:進化の過程

化石人類の種類は次に示すように猿人・原人・旧人・新人に大別されるが、注意しなければならないのは、これらは順に進化したのではなく、各々は別個に発生したことである。彼らはそれぞれ別な種であり、独自に進化した。また併存した時期もり、新人以外は絶滅した。現在の我々、つまり現生人類=ホモ=サピエンスの直接的な先祖は新人であり、新人は地球上に広がっているが、その起源は約20万年前のアフリカであったという、アフリカ単独起源説が有力になっている。

説明:人類の出現年代

人類の出現年代は、人類学の研究によって現在、さらに過去にさかのぼっている。旧版では約500万年前とされていたが、今年度の教科書から約700万年前とされるようになった。1992年にエチオピアで発見されたラミダス猿人は、約440万年前とされ、全身が発掘された化石人類としては最古で、直立歩行していたことが確認されている。これを基準にして人類の起源は約500万年と推定されていたた、2001年にアフリカのチャドのサハラ砂漠から約700万年前にさかのぼるという化石人類が発見され、人類の起源は約700万年と改められた。このように教科書の改訂ごとに人類の起源年代はさかのぼっている。従って、受験で問われることはまずないので、生徒にも年代を無理に覚えさせる必要はないが、科学の進歩で歴史が書き換えられていることに興味を持たせるのがよいだろう。

説明:ホモ=ハビリス

ホモ=ハビリスは、旧版教科書では猿人とされていた。厳密には猿人と原人の中間にある化石人類であるが、これを原人と断定したため、原人の発生は昨年までの教科書の180万年前から一挙に240万年前までさかのぼった。ただし他の教科書、たとえば実教出版などでは新版でも180万年とされている。ホモ=ハビリスとは「器用な人」と言う意味で、ホモ族に属する最初の化石人類とされている。アフリカ内地で進化を遂げたが、他の大陸には広がらなかった。

説明:原人

原人(ホモ=エレクトゥス)には、他にドイツで発見されたハイデルベルク人などがある。なお、昨年までの教科書では、原人段階で脳容積が増大したことから、言語活動が始まったとされているが、新版からはそれには疑問があるとしてはずされている。また、かつては「ピテカントロプス=エレクトゥス」とか「シナントロープス=ペキネンシス」として独立した属と説明されていたが、現在では用いられていない。これらはいずれもホモ=エレクトゥス(原人)という属の一地方集団と考えられるようになったからである。また北京原人が現在の中国人(漢民族)の直接の先祖であるかどうかは不明である。漢民族の祖先と考えられるのは新人(ホモ=サピエンス)の周口店上洞人である。

補足:ネアンデルタール人

かつてはネアンデルタール人はホモ=サピエンス(現生人類)の一亜種とされ、ホモ=サピエンス=ネアンデルターレンシスとも言われていたが、現在ではホモ=サピエンスとは区別されいる。また、ネアンデルタール人は現生人類に進化したと考えられていたが、現在では否定されており、それとは別に原人から枝分かれした現生人類と併存したと考えられるようになっている。かなり高い文化を持っていたと考えられるが、何故絶滅したかについては定説はない。

補足:ホモ=サピエンス

ホモ=サピエンスとは「知恵ある人」の意味。かつてはホモ=サピエンス属はネアンデルタール人を含んでいたため、クロマニヨン人など新人はホモ=サピエンス=サピエンスといわれていたが、現在では否定され、新人を単にホモ=サピエンスというようになっている。クロマニヨン人、周口店上洞人以外には、イタリアで発見されたグリマルディ人などがいる。また、かつては人類は原人から旧人を経て各地で新人に進化し、それぞれの人種差がうまれたと捉えられていたが、現在ではDNAなどの分析の結果、現生人類は約20万年前にアフリカに生まれ、そこから各地に拡散したというアフリカ単一起源説が有力になっている。

補足:原始美術

石のヴィーナス 洞窟絵画には、獲物の大猟を願う、彩色動物画が多い。また、自然の豊穣を願う女性裸像などが多数残されている。右の図は、オーストリアのヴィレンドルフ付近で出土した「石のヴィーナス」と言われる女性裸像。このような女性像はピレネー山脈からロシアに至るヨーロッパ各地で出土している。

先頭へ

イ.農耕・牧畜の開始と国家の誕生 ノートへ

地図:現生人類の拡散

 ホモ=サピエンス(現生人類)の拡散   はホモ=サピエンスの主な遺跡

現生人類の拡散

◎学習のポイント


  旧 石 器 文 化 新 石 器 文 化
石 器  打製石器(礫石器・剥片石器・握斧・石刃)   磨製石器(石斧、石臼、石皿など) 
その他道具  新人段階から骨角器の使用始まる。   土器の製作(彩文土器の普及)。 
衣服・住居  毛皮類・移動性が強く洞穴住居を利用。   織物を作製・竪穴住居などに定住。 
生業・経済  狩猟・採集・漁労による獲得経済。   農耕・牧畜による生産経済。 
文化の特色  洞窟絵画・女性像などの原始美術。  初期農耕文化。彩文土器などの多様化。

*中間に、細石器などを中心とした、中石器時代を置く考えもある。

補足:農耕以外の文化圏

 ユーラシア西南部(西アジア・東地中海)では農耕・牧畜が開始され、中緯度地帯に広がったが、人類(新人)が地域ごとの環境への適応するなかで、農耕文明の形成に向かわなかった場合もある。
  • ユーラシア北部、東北部の森林地帯には狩猟民族文化が形成され、細石器・弓矢・犬の家畜化などが進んだ。
  • ユーラシア中央部の草原地帯では遊牧民族文化が形成され、騎馬の技術、弓・槍などが発達した。
これらの周辺文化は、時として農耕文化圏を襲撃しており、また匈奴や突厥、モンゴル人などのように世界史上、重要な存在となっている。

先頭へ

ウ.人種と語族の分化 解説3 ノートへ

解説:人種と民族

 一般に、肌の色などの身体的特徴から「白人」・「黒人」・「黄色人」などに分けられることが多くが、現在では人類を「人種」で分けることは科学的根拠が否定されており、また、人種主義 racism が「人種差別」そのものであることから、避けられている。
 また、「人種」を「民族」と取り違えることにも注意しなければならない。「民族」は長期にわたる歴史的・文化的な経緯によって後天的に形成された概念であり、それ自体に生物学的な共通性を持つようなものではない。

先史の世界 解説・補足 終わり
目次へ : 次節へ