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ホモ=ハビリス

アフリカで発見された化石人類の一つ。猿人と原人の中間的段階と考えられている。250萬年前までに、石器の製造を開始したとされ、「能力ある人」の意味でホモ=ハビリスと名付けられた。

「能力ある人」

 約250万年前、アフリカでの大地溝帯(プレートの分離によって形成された、アフリカ大陸のエチオピアからモザンビークなどに及ぶ南北の大きな裂け目)で、高度な石器製造技術を持っていた化石人類。発見者のリーキーはホモ属に属すると考えホモ=ハビリスと命名したが、現在では猿人と次の原人の中間的な段階と考えられている。
 1959年7月17日、東アフリカ、タンザニアのオルドヴァイ峡谷で、30年以上も発掘を続けていたナイロビ博物館のリーキー博士夫妻は、人類化石を発掘しジンジャントロプスと命名した。さらに翌年、さらに古い地層から12歳ぐらいの子供の化石を発見、現生人類につながる直系の先祖ホモ属の化石であると確信して、「ホモ=ハビリス」(「能力ある人」の意味)と名付けた。同じ地層から、礫石器が見つかり、彼らは道具を使用していたと考えられる。しかし現在の研究ではホモ=ハビリスは猿人(アウストラロピテクス)にかなり近く、ホモ属ではないという説も有力である。<『われら以外の人類』内村直之 朝日選書 2005年 p.158-162>

ホモ=ハビリスと石器の発明

 地球は今から300万年から250万年まえ、氷河期の寒冷な気候が進んだ。アフリカ大陸では森林が大幅に減少して、大型類人猿は生息が困難となったが、すでにサバンナに進出していたヒトの祖先はこうした環境の変化に適応し、対応していった。彼らが獲得した新しい食料獲得技術が石器の使用であった。約250万年前に、石に別の石をぶつけて片面を砕いただけの簡単な石器であったが、鋭く尖った部分は動物の皮をはぎ、肉を切り取るにはきわめて有効であった。かれらがどのような狩りをしていたかはわかっていないが、石器と同時に石で付けた傷のある動物の骨が数多く出土しているので、栄養価の高い肉や骨髄を食べていたことがわかっている。石器をつくった彼らはホモ=ハビリス「器用な人」と名付けられた。
 彼らはアウストラロピテクスとは身長、頭蓋骨容量が大きく変化しておらず、新種というより猿人の最終段階であったとも考えられているが、石器という全く新しい道具の製作を開始し、肉食によって栄養状態を改善することに成功したことは、ヒトの進化を一段と進める契機となり、数十万年を経た190万年ほど前のホモ=エレクトゥス(原人)を誕生させた。<竹沢尚一郎『ホモ・サピエンスの宗教史』2023 中央公論新社 p.30>(一部改変)などによる。