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2013年度 詳説世界史 準拠ノート

Text p.10

序章 先史の世界

序章 先史の世界

用語リストへ ア.人類の進化
 先史時代 =人類が出現してから文字を発明して記録を残すようになるまで、人類史の99%を占める。
人類の定義を考えよう = b 直立二足歩行 すること。 → 脳容積が増大して手が解放された。
  他にc 道具  火  言語 を使用し、社会生活を営み、精神活動を行う=”d 文化 ”を形成した。
化石人類に見る人類の進化。

補足:進化の過程

化石人類の種類は次に示すように猿人・原人・旧人・新人に大別されるが、注意しなければならないのは、これらは順に進化したのではなく、各々は別個に発生したことである。彼らはそれぞれ別な種であり、独自に進化した。また併存した時期もり、新人以外は絶滅した。現在の我々、つまり現生人類=ホモ=サピエンスの直接的な先祖は新人であり、新人は地球上に広がっているが、その起源は約20万年前のアフリカであったという、アフリカ単独起源説が有力になっている。
 猿人  地質年代の新生代第3期の末期。
・人類の誕生は人類学の発展により、現在ではa 約700万年前のアフリカ であったと考えられている。

説明:人類の出現年代

人類の出現年代は、人類学の研究によって現在、さらに過去にさかのぼっている。旧版では約500万年前とされていたが、今年度の教科書から約700万年前とされるようになった。1992年にエチオピアで発見されたラミダス猿人は、約440万年前とされ、全身が発掘された化石人類としては最古で、直立歩行していたことが確認されている。これを基準にして人類の起源は約500万年と推定されていたた、2001年にアフリカのチャドのサハラ砂漠から約700万年前にさかのぼるという化石人類が発見され、人類の起源は約700万年と改められた。このように教科書の改訂ごとに人類の起源年代はさかのぼっている。従って、受験で問われることはまずないので、生徒にも年代を無理に覚えさせる必要はないが、科学の進歩で歴史が書き換えられていることに興味を持たせるのがよいだろう。
・b アウストラロピテクス  1959年 タンザニアの オルドヴァイ渓谷 で発見された。
 = 「南の猿」の意味。
・文化 最も簡単なc 打製石器 礫石器)を使用。単純な狩猟採集生活。
 原人  地質年代の更新世(洪積世)中期。a 約240万年 前。
・b ホモ=ハビリス  1964年、タンザニアで発見された猿人と原人の中間と考えられる化石人類。
  ※ホモ …… 生物学的に現生人類の属するのがホモ族。

説明:ホモ=ハビリス

ホモ=ハビリスは、旧版教科書では猿人とされていた。厳密には猿人と原人の中間にある化石人類であるが、これを原人と断定したため、原人の発生は昨年までの教科書の180万年前から一挙に240万年前までさかのぼった。ただし他の教科書、たとえば実教出版などでは新版でも180万年とされている。ホモ=ハビリスとは「器用な人」と言う意味で、ホモ族に属する最初の化石人類とされている。アフリカ内地で進化を遂げたが、他の大陸には広がらなかった。

 c ホモ=エレクトゥス  ユーラシア大陸全域に広がる。
  例d ジャワ原人  1891~94年 インドネシア・ジャワ島のトリニールで発見。
  脳容積が約900ccに増大。
   e 北京原人   1927~37年に北京郊外の周口店で発見された。脳容積が約1000ccに増大。
・文化 高度な打製石器であるハンドアックスやf 火 の使用。高度な狩猟・採集生活。

説明:

原人(ホモ=エレクトゥス)には、他にドイツで発見されたハイデルベルク人などがある。なお、昨年までの教科書では、原人段階で脳容積が増大したことから、言語活動が始まったとされているが、新版からはそれには疑問があるとしてはずされている。また、かつては「ピテカントロプス=エレクトゥス」とか「シナントロープス=ペキネンシス」として独立した属と説明されていたが、現在では用いられていない。これらはいずれもホモ=エレクトゥス(原人)という属の一地方集団と考えられるようになったからである。また北京原人が現在の中国人(漢民族)の直接の先祖であるかどうかは不明である。漢民族の祖先と考えられるのは新人(ホモ=サピエンス)の周口店上洞人である。
 旧人  更新世後期のはじめころ a 約60万年 前。

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・b ネアンデルタール人  1856年、ドイツのライン川下流で発見。脳容積、現代人にほぼ同じ。
 → ヨーロッパ、アジアに広く分布し、原人とも共存した。

補足:ホモ=ネアンデルターレンシス

かつてはネアンデルタール人はホモ=サピエンス(現生人類)の一亜種とされ、ホモ=サピエンス=ネアンデルターレンシスとも言われていたが、現在ではホモ=サピエンスとは区別されいる。また、ネアンデルタール人は現生人類に進化したと考えられていたが、現在では否定されており、それとは別に原人から枝分かれした現生人類と併存したと考えられるようになっている。かなり高い文化を持っていたと考えられるが、何故絶滅したかについては定説はない。
・文化 発達した打製石器である剥片石器を使用。毛皮をまとい、洞穴住居に住む。
 c 埋葬 の習慣をもつ。  → 宗教的観念の発生か。
 新人(現生人類)  a 約20万年 前。現代人と同じ現生人類:b ホモ=サピエンス に属する。
※現生人類の起源はアフリカ単一説が有力になっており、そこから地球上に拡散したと考えられている。
・c クロマニヨン人  南フランスで発見。  d 周口店上洞人  北京原人の上層から出土。

補足:ホモ=サピエンス

ホモ=サピエンスとは「知恵ある人」の意味。かつてはホモ=サピエンス属はネアンデルタール人を含んでいたため、クロマニヨン人など新人はホモ=サピエンス=サピエンスといわれていたが、現在では否定され、新人を単にホモ=サピエンスというようになっている。クロマニヨン人、周口店上洞人以外には、イタリアで発見されたグリマルディ人などがいる。また、かつては人類は原人から旧人を経て各地で新人に進化し、それぞれの人種差がうまれたと捉えられていたが、現在ではDNAなどの分析の結果、現生人類は約20万年前にアフリカに生まれ、そこから各地に拡散したというアフリカ単一起源説が有力になっている。
・文化 高度に発達した打製石器である石刃技法骨角器を使用。
    e 洞穴絵画  スペインのf アルタミラ と、南フランスのg ラスコー が有名。
  → 狩猟と漁労の発達。 → 自然の生産力への依存強まる。女性像などn原始美術。

補足:原始美術

石のヴィーナス 洞窟絵画には、獲物の大猟を願う、彩色動物画が多い。また、自然の豊穣を願う女性裸像などが多数残されている。右の図は、オーストリアのヴィレンドルフ付近で出土した「石のヴィーナス」と言われる女性裸像。このような女性像はピレネー山脈からロシアに至るヨーロッパ各地で出土している。
・h 新人がアフリカ大陸からユーラシア大陸、さらに南北アメリカ大陸など地球上全域に拡散した。 
・ここまでの人類の文化段階 = i 旧石器時代 
  その特色 =j 打製石器を主要な道具として用い、狩猟・採集を主とした獲得経済の時代。 

地図:現生人類の拡散

 ホモ=サピエンス(現生人類)の拡散   はホモ=サピエンスの主な遺跡

現生人類の拡散

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Text p.12


用語リストへ イ.農耕・牧畜の開始と国家の誕生
・a 約1万年 前、地球上の環境の変化 = b 氷期の終わりにともなう温暖化 
 → 地球上の各地で、現生人類が新たな環境にそれぞれ適応していった。
・c 農耕・牧畜 の開始 = 現在は、d 約9000年前 、e 西アジア が最初とられている。
 → f 磨製石器 (石斧・石臼・石皿など)とg 土器 の出現。
 = 穀物の栽培と保存、調理に用いられる。他に、織物がつくられ、竪穴住居が出現するなどの変化。
・この新しい人類の文化段階を、 新石器文化 という。
  特色 =i 磨製石器・土器を使用した農耕・牧畜という自然に働きかける生産経済の時代。 
◎学習のポイント
  旧 石 器 文 化 新 石 器 文 化
 石 器  打製石器(礫石器・剥片石器・握斧・石刃)   磨製石器(石斧、石臼、石皿など) 
その他道具  新人段階から骨角器の使用始まる。   土器の製作(彩文土器の普及)。 
衣服・住居  毛皮類・移動性が強く洞穴住居を利用。   織物を作製・竪穴住居などに定住。 
生業・経済  狩猟・採集・漁労による獲得経済。   農耕・牧畜による生産経済。 
文化の特色  洞窟絵画・女性像などの原始美術。  初期農耕文化。彩文土器などの多様化。
            *中間に、細石器などを中心とした、中石器時代を置く考えもある。
・農耕の始まりから文明の形成へ
 初期農法 
・a* 乾地農法  雨水だけに依存し、肥料を用いない農法。略奪農法とも言う。
  = まだ移動性が強いが、日乾し煉瓦による住居もつくられている。
  西アジアの初期農耕遺跡 ジャルモイェリコなど。 → 教科書 p.17 地図でマーク。
 灌漑農業  
・a メソポタミア 地方の  ティグリス・ユーフラテス川 流域に始まる。
  = 用水路やため池などの人工的な水利技術によって水を確保し、生産を安定させた。
  → c 食料生産の発達によって人口が増え、地域の農村の統合も進む。 
 文明 の形成   前5000年前(紀元前3000年)に始まる。
・農業と牧畜という生産経済の開始によって生まれた社会と文化の総体をC  文明 という。
・その4要素  a 都市の発生   → 宗教と交易の中心となる。
 b 階級の形成  → 社会の指導層(神官・戦士)が、平民・奴隷を支配する階級社会。
 c 金属器の使用  → はじめ青銅器、ついで鉄器が武器や工具として製造される。
 d 文字の使用  → 政治上の必要(租税)や商取引の発生とともに始まる。
・意義:e 文明の形成と共に、国家が生まれ、人類は歴史時代には入った。 
D 文明圏の形成
・前5000年~前3000年ごろ、農耕文明が西アジアのメソポタミアから周辺に伝播したと考えられている。
 → ユーラシア大陸の、いずれも大河の流域に集中的な農耕文明圏が形成された。
 a ナイル川流域   : → エジプト文明を形成。地中海文明につながる。
 b ティグリス・ユーフラテス川   : → メソポタミア文明。現在、最古と考えられている。
 c インダス川 : → インダス文明。インド、東南アジアの文明につながる。
 d 黄河・長江  : → 中国文明。東アジアに拡大。
 *アメリカ大陸には、ややおくれて、独自の文明圏が産まれたが、金属器は金、青銅器にとどまり
 鉄器文化は形成されなかった。

補足:農耕以外の文化圏

 ユーラシア西南部(西アジア・東地中海)では農耕・牧畜が開始され、中緯度地帯に広がったが、人類(新人)が地域ごとの環境への適応するなかで、農耕文明の形成に向かわなかった場合もある。
・ユーラシア北部、東北部の森林地帯には狩猟民族文化が形成され、細石器・弓矢・犬の家畜化などが進んだ。
・ユーラシア中央部の草原地帯では遊牧民族文化が形成され、騎馬の技術、弓・槍などが発達した。
これらの周辺文化は、時として農耕文化圏を襲撃しており、また匈奴や突厥、モンゴル人などのように世界史上、重要な存在となっている。

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Text p.13


用語リストへ ウ.人種と語族の分化
・a 人種  = 人間の身体的特徴(身長、頭の形、皮膚の色、頭髪の色など)での分類
 一般に、コーカソイド(白色人種)・モンゴロイド(黄色人種)・ネグロイド(黒色人種)
 19世紀以降のヨーロッパでは人種的な優劣の差があるという見方が強かったが、現在は科学的に否定されている。
・b 民族  = 言語・宗教・社会的慣習など文化的に同一性のある集団で分類。
 例 日本民族、漢民族、ゲルマン民族、ラテン民族等々。人種とは一致しないので注意する。
・c 語族  = 言語の類似を系統的に分類したもの。これも人種、民族とは一致しないので注意。
 →  同じ系統の言語を用いる集団を、~語系と言うことが多い。主要な語族 → 教科書 p.13 の表を参照。
・注意点 国民は国家の構成員という意味で、近代の国民国家成立後の概念である。

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