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ヘロデ王

前37年、ハスモン朝を滅ぼし、ローマの宗主権の下ユダヤ王となり、大王と言われた。イェルサレム神殿を再建。この時代の末にイエスが生まれた。

 ヘロデ(ヘロデス)はユダヤ人ではなくイドマヤ人であるが、イドマヤ人とはユダヤの南方のエドム人の子孫で、ハスモン朝の支配下で強制的に割礼を施され、ユダヤ教に改宗させられた人々であった。ヘロデの父、アンティパスがハスモン家の内紛に乗じて力をつけてユダヤ総督となり、実質的な権力者になったとき、その子ヘロデはガリラヤ地方の知事となった。その後もハスモン朝の内紛が続いたが、前40年、ヘロデは親ローマ派として自らローマに赴き、アントニウスに取り入って、元老院からユダヤ王の地位を与えられた。その後、前37年にハスモン家を滅ぼし、名実ともにユダヤの王となり、ハスモン家の娘と結婚した。ローマでアントニウスに代わりオクタウィアヌスが権力を握ると、直ちにそれに取り入って、権力を保障された。
 ヘロデはイェルサレム神殿を大改築して壮大な神殿に造り替え、ユダヤ人の歓心を買うことに務めたが、ユダヤ教徒のローマ化に対する反発も強まった。彼は常に反乱の危険におびえながら、懐柔と圧政を使い分けて権力を維持し、「ヘロデ大王」と言われるようになった。前4年に死ぬと領地は三人の子どもに分割され、ガリラヤ地方はヘロデ=アンティパスが領有したが内紛とユダヤ人の反抗が続いた。

新約聖書に見るヘロデ大王

 新約聖書のマタイ福音書第2章では、イエスはヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムで産まれたとされている。そのとき東方から来た占星術の博士たちが「ユダヤの王が生まれた」と言っているのを聞き、恐れたヘロデ王は、ベツレヘムとその周辺で産まれた2歳以下の男の子を、一人残さず殺した。イエスの父ヨセフは夢に天使が現れ「エジプトに逃れなさい」と告げたので、幼子イエスとその母マリアを伴ってエジプトに逃れていたので難を逃れた。ヘロデが死んだ後にイスラエルの地に戻ったヨセフは、やはり天使の声に導かれてナザレの町に住み、イエスを育てたという。<『新約聖書』マタイによる福音書 第2章>

Episode サロメの舞の話

 新約聖書のマタイ福音書第14章などに出てくる領主ヘロデとは、ヘロデ大王の子のヘロデ=アンティパスのことである。彼は妻がいながら兄弟の妻ヘロデア(これはヘロデの孫娘)を奪い、妾とした。預言者ヨハネはその不道徳を厳しく非難したので、ヘロデ=アンティパスはヨハネを捕らえた。さらに殺そうと思ったが、民衆の怒りを恐れて実行できないでいた。ヘロデ=アンティパスの誕生祝いでヘロデアの娘サロメが舞をまうと、喜んで彼女の願うものは何でも与えようと約束した。サロメは母にそそのかされて、「ヨハネの首を盆に載せて、ここに持ってきていただきとうございます」と言った。彼は困ったが一旦誓った手前、人を使わして獄中のヨハネの首を切り、盆に載せてサロメに与え、少女はそれを母のもとに持って行ったという。<『新約聖書』マタイによる福音書 第14章>