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スティーヴンソン

産業革命期のイギリスの発明家。1825年に蒸気機関車による鉄道運行に成功、1830年にはマンチェスター=リヴァプール間で鉄道営業を開始、1830年代の鉄道時代を牽引した。

蒸気機関車ロケット号
スティーヴンソンが1829年に設計した蒸気機関車ロケット号。
 産業革命は1760年代に急速に進展したが、物資の輸送は依然として馬車と運河が担っていた。19世紀に入り、より高速で大量に、つまり安価に原料や製品、そして人の輸送を可能にする交通手段の発明が求められるようになっていた。蒸気機関車はすでにトレヴィシックによって1804年に考案されていたが、それは実用化されていなかった。スティーヴンソンはその改良に取り組み、1814年にはじめて実用的な蒸気機関車を製作した。しかし、蒸気機関車が牽引する実際の客車を乗せ、貨物輸送が可能な鉄道が運行されたのは、1825年ストックトン-ダーリントン間が最初であった。世界最初の鉄道営業は、同じくスティーヴンソンの造った蒸気機関車ロケット号による、1830年リヴァプール・マンチェスター鉄道である。この工業都市と貿易港を結ぶ鉄道は、競合する馬車や運河に対抗すべく、組織的に運用された「鉄道会社」によって運用された。

ストックトン・ダーリントン間の鉄道運転

 1825年、スティーヴンソンが実用化した蒸気機関車によって牽引された客車と貨車(35台)が、初めてストックトン-ダーリントン間の約17kmの鉄道の上を走った。時速は約18kmであったという。この鉄道が運んだものは石炭が主であり乗客を乗せて営業したものではなかった。しかし、蒸気機関車がレールを走るという鉄道が実用化されたことで、鉄工業と石炭業が急速に発展するという相乗効果を生んだ。また、スティヴンソンは新しい蒸気機関の技術開拓者としての名声を高めた。

マンチェスター・リヴァプール鉄道

 鉄道によるストックトン・ダーリントン間の石炭輸送が成功すると、イギリス各地の炭田でも石炭積み出しのための鉄道敷設が始まった。こうして鉄道の有用性が明らかになると、それまで馬車や運河に依存していた人間と貨物の輸送を、定時的に行おう等する鉄道営業への期待が高まった。それらの需要に応えてスティーヴンソンは蒸気機関車とそれを走らせるレールの改良に取り組み、1830年マンチェスター・リヴァプール鉄道を開設した。それは綿工業の工業都市マンチェスターと港湾都市リヴァプールを結び、綿製品その他の工業製品と綿花その他の原料を運ぶとともに、短時間での人の移動を可能にするという画期的成功を収めた。この成功によって鉄道敷設は急速に延び、イギリスでは1840年代の「鉄道狂時代」が出現した。