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パグウォッシュ会議

ラッセル=アインシュタイン宣言を引き継ぎ、1957年から始まった核廃絶をめざす科学者国際会議。

 パグウォッシュ会議 Pugwash Conferences on Science and World Affairs は、1957年に始まる、核兵器廃絶を世界に働きかけるための科学者による国際会議で、現在まで組織的活動を継続している。1995年にはノーベル平和賞を受賞した。日本には「日本パグウォッシュ会議」が設立されている。 → 外部サイト 日本パグウォッシュ会議

ラッセル=アインシュタイン宣言

 第二次世界大戦の末期に、広島・長崎原子爆弾が使用されて多くの非戦闘員市民に対する悲惨な大量殺戮が行われたことに対し、世界的に知られた哲学者・数学者であるラッセルと、原子物理学者であったアインシュタインの二人は、1955年4月に核戦争の廃絶を訴えた。その直後、アインシュタインは死去したが、二人の訴えは世界の著名な科学者に支持され、1955年7月9日ラッセル=アインシュタイン宣言として発表された。それが一つの契機となって、世界的な核兵器廃絶運動が始まった。

核開発と科学者の責任

 ラッセル=アインシュタイン宣言の理念を具現化するために、1957年7月7日に世界10ヵ国22人の科学者がカナダのノヴァスコシア州パグウォッシュに集まり、原子力の利用(平和・戦争両目的を含めて)の結果起こる障害の危険、核兵器の管理、科学者の社会的な責任について討議を行った。日本からは湯川秀樹、朝永振一郎、小川岩雄の三名が参加した。討議の結果として、1957年7月11日に核兵器の脅威と核戦争廃止に向けての科学者の社会的責任について声明を発表した。この第1回から現在まで回を重ね、科学者による核廃絶の運動を進めている。
 しかし、冷戦下で米ソ以外にイギリス、フランス、中国が核実験を実行し、核保有国となることを阻止することはできなかった。また、アメリカの核独占に対してソ連が核保有国となることを、核抑止論の立場から認めるか、あるいは全面的な核廃絶を進めるべきか、では次第に意見の相違も表面化し、分裂の傾向もあった。さらに科学者の中には、核の平和利用は認めるべきだとの意見もあり、あらゆる面での核開発を否定する意見との対立も生じた。
 そのような現実の中で、会議そのものの運用は苦しい道のりが続いたが、部分的核実験停止条約(PTBT)、核拡散防止条約(NPT)などの実現をもたらした。その一方、核の平和利用である原子力発電所の建設は、経済成長の上で不可欠とされて、日本もふくめ各国で推進された。冷戦の終結した1990年代以降も核廃絶を目指す科学者の組織として存続し、1995年にはノーベル平和賞を与えられた。

NewS パグウォッシュ会議、ウクライナ戦争で声明発表

 2022年2月24日ロシア連邦プーチン大統領によるウクライナ侵攻は、事実上の戦争の様相となり、ロシアによる核兵器の使用も懸念される事態が生じた。その動きを受けて、2月26日、パグウォッシュ会議事務局長およびその代表者名で声明がっぱようされた。
 声明では、ウクライナにおける戦争はヨーロッパにおいては過去50年以上例のない軍事介入であるとして、諸国家は「紛争解決のための武力による威嚇もしくは武力の行使を控える法的な義務を負っている」と規定する国連憲章にハンしていると断定し、ロシアのすべての攻撃は停止されるべきである、と述べた。そのうえで、次のような解決策を提唱した。<要約は『世界臨時増刊』ウクライナ侵略戦争 2022/4/14 p.199-200/英文はPugwash Conferences on Science and World Affairs
  1. 即時停戦
  2. ウクライナからのすべての外国軍、外国の軍事施設の全面的な撤収
  3. ドンバス地方の自治を言語的アイデンティティの見地から承認すること
  4. クリミアをロシア連邦の一部として承認すること
  5. ウクライナとロシアの国境を越えた人々の移動の自由
  6. ロシアの撤退の後の制裁の解除
  7. ウクライナの中立な地位の合意。NATOに加盟しない代わりに、条約に基づく国際的な安全保障を担保する。
  8. ウクライナの経済復興への包括的プログラム。
 これは国家の利得から離れた平和志向の国際団体からの具体的な提唱として実現可能なのではないだろうか。ただ、戦争初期には妥当とも考えられた案だが、戦争が長期化し、余りにも大きな犠牲を払ってしまったウクライナ側にとってはドンバスの自治やクリミアの放棄は受け入れ難いものとなてしまったかもしれない。当初から落としどころとみられていたミンスク合意の再確認、クリミアのロシア編入が遠のき、おまけにフィンランド・スウェーデンのNATO加盟となれば、ロシアはさらに硬化し、即時停戦は大きく後退したとみられる。<2022/5/22記>
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『世界 臨時増刊』
ウクライナ侵略戦争
2022/4 岩波書店