アッシリア
メソポタミアのティグリス川上流地帯、現在のイラク北部一帯に興った民族。前9世紀に有力となり、前7世紀にはオリエントを統一して最初の世界帝国となった。 → アッシリア帝国
メソポタミア北部のアッシュールに都市国家を作っていたアッシリア人は前15世紀ごろミタンニなどに服属していた。その段階を古アッシリアという。彼らは前9世紀に鉄製の戦車と騎兵を使って有力となり、周辺の征服を開始し、西アジアの分裂時代を終わらせてメソポタミアを統一した。この段階から新アッシリアという。さらに前7世紀にエジプトを征服してクシュ王国をナイル上流のメロエに後退させ、オリエントを統一し、アッシリア帝国を形成した。これはメソポタミアとエジプトという二つの文明圏を含むオリエント世界を初めて統一的に支配した世界帝国であった。
アッシリア人は前3000年紀の末にアッシリア(アッシュール)地方に都市国家を作り、イラン高原の錫(青銅器の原料)の交易を独占して中継貿易で栄えた(この時期を古アッシリアとも言う)。前15世紀ごろミタンニに服属したが、前12世紀頃に滅亡したヒッタイトから鉄器製造技術を受け継ぎ、また鉄鉱石の産地アルメニアを抑えたため次第に有力となった。
→ 古アッシリアの位置はヒッタイトの項の地図参照。
アッシュール商人 アッシリアの都市アッシュールには、バビロニアからは織物がもたらされ、北東のイラン・アフガニスタンからは錫(スズ)が、北西のクルディスタンからは銅がもたらされ、交易の中心として栄えた。またアッシュールの商人は銅・錫・織物を西方のアナトリアに運び、その地で銀や金との交易を行った。このような広域の交易圏で活動していたアッシリア商人は、アナトリアで滞在する居住地を設けていた。最近、トルコのカッパドキア地方のキュル・テベ(古代名カニシュ)でそのようなアッシュール商人の居住地(カールムと言った)と思われる遺跡で発見された粘土板文書の解読が進み、彼らの活発な商業活動が明らかになっている。<小林登志子『アッシリア全史』2025 中公新書 p.64>
アナトリアでアッシュール商人の活動したのは前19~18世紀であるが、次の前17世紀になると、アナトリア中央部にヒッタイトが登場してくる。前14世紀にはヒッタイトとアッシリアの交流が始まる。エジプトに侵入 してそれを征服した。このアッシリアが、メソポタミアからエジプトにかけてのオリエント世界を最初に統一的に支配した「アッシリア帝国」となった。首都のニネヴェをはじめ、ニップール、コルサバード、アッシュールなど多くの遺跡が発掘され、楔形文字の解読による「アッシリア学」がイギリス、フランスで盛んである。
古アッシリア
アッシリアは現在のイラク北部、ティグリス川中流域にあたり、北方のクルディスタン山地から流れる多くの河川がチグリス川に合流する地域であるので、農耕に適していた。しかもその西にはシリアを経てアナトリア(小アジア)につながり、南のメソポタミアのバビロン、東のイラン高原方面とを結ぶ交通の要地でもあった。アッシリア人は前3000年紀の末にアッシリア(アッシュール)地方に都市国家を作り、イラン高原の錫(青銅器の原料)の交易を独占して中継貿易で栄えた(この時期を古アッシリアとも言う)。前15世紀ごろミタンニに服属したが、前12世紀頃に滅亡したヒッタイトから鉄器製造技術を受け継ぎ、また鉄鉱石の産地アルメニアを抑えたため次第に有力となった。
→ 古アッシリアの位置はヒッタイトの項の地図参照。
アッシュール商人 アッシリアの都市アッシュールには、バビロニアからは織物がもたらされ、北東のイラン・アフガニスタンからは錫(スズ)が、北西のクルディスタンからは銅がもたらされ、交易の中心として栄えた。またアッシュールの商人は銅・錫・織物を西方のアナトリアに運び、その地で銀や金との交易を行った。このような広域の交易圏で活動していたアッシリア商人は、アナトリアで滞在する居住地を設けていた。最近、トルコのカッパドキア地方のキュル・テベ(古代名カニシュ)でそのようなアッシュール商人の居住地(カールムと言った)と思われる遺跡で発見された粘土板文書の解読が進み、彼らの活発な商業活動が明らかになっている。<小林登志子『アッシリア全史』2025 中公新書 p.64>
アナトリアでアッシュール商人の活動したのは前19~18世紀であるが、次の前17世紀になると、アナトリア中央部にヒッタイトが登場してくる。前14世紀にはヒッタイトとアッシリアの交流が始まる。
新アッシリア
オリエントの分裂時代にも国家を存続させ、前9世紀には鉄製の戦車と騎兵隊を採用して、次第に強大となった。これ以降を新アッシリアともいい、前8世紀の終わりごろ、サルゴン2世、次いでセンナケリブ王のもとでシリア、フェニキア、バビロンをつぎつぎと併合し、イスラエル王国を滅ぼした。さらに前663年には、アッシュール=バニパル王が