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多国籍企業

1960年代以降に出現した、本社-支社網を全世界に展開する国際企業。

 世界企業と言われる形態は、20世紀の初頭から石油(シェル)、化学(ユニリーバ)などヨーロッパの中で複数の国家にまたがって設立された企業に該当するが、現在は特に1960年代以降に出現したアメリカに本社を持ち、世界各国に支社、視点を持つ大企業を指すようになっている。具体的な例は、IBMやフォードなどがあげられる。さらに1990年代からは自動車やIT産業を中心に、資源や労働力の確保を外国に求める企業が多くなり、日本から起こったいくつかの有力企業も多国籍化している。
 多国籍企業はさらに競争を激しく行い、いわゆるグローバリゼーションの弊害が発展途上国の環境破壊という問題を生み出している。

グローマリゼーションと多国籍企業

 多国籍企業は、近代初期の営利企業の現代版であるが、その数は1970年の7000社から2006年の7万8000社へと急増した。ゼネラル・モータース、ウォルマート、エクソンモービル、三菱、シーメンスといった企業が多国籍企業の売り上げトップ20に名を連ねている。これらの企業のうち、北アメリカ・ヨーロッパ・日本・韓国以外に本社を置く企業は一社もない。このような地理的集中は、南北間に現存する非対称的な力関係を反映している。
 グローバル市場での卓越した地位を維持するため、多国籍企業は頻繁に他の企業と合併し、国家のGDPを越える売り上げを持つ企業が現れている。同時に多国籍企業のグローバルな活動は、規制緩和がますます進みつつある労働市場のなかで強化され、南世界での安価な労働力、資源、有利な生産条件を確保することで機動力と収益力を高めている。しかし、いくつかの多国籍企業は、国外工場での劣悪な労働基準を容認することで低価格を維持していると批判された。<マンフレッド・B・スティーガー/桜井公人他訳『新版グローバリゼーション』2010 岩波書店 p.56-61">
 そのような批判はグローバルサウスといわれる勢力の台頭によってさらに明らかになり、例えばGAFAと総称されるIT関連の世界規模の企業が、いわゆるタックスヘイブンを利用して不当に税逃れをしているという批判が強くなっている。
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