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第5章 イスラーム世界の形成と発展

4 イスラーム文明の発展

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ア.イスラーム文明の特徴 用語リストへ
 イスラーム文明 の特徴は次のようにまとめることが出来る。
1.b 融合文明 であること。

・征服者であるアラブ人のイスラーム教とアラビア語 ─┐ 
                          ├─ イスラーム文明を形成
 征服された西アジア諸民族の文化         ─┘ 

2.c 普遍的文明 であること。各地で受容され地域的、民族的特色を持つ文化が成立。
 →イラン=イスラーム文化、トルコ=イスラム文化、インド=イスラーム文化など。
3.d 世界的広がり  スペインの トレド を中心に、e 中世ヨーロッパの文化  に影響。
  → ギリシア文化を西ヨーロッパに伝え、f ルネッサンス を開花させる。
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イ.イスラームの社会と文明 用語リストへ
1.a 都市の文明 :軍人・商人・知識人が居住する都市を中心に文化が形成される。
  イスラーム法学やイスラーム神学をおさめた知識人をb ウラマー という。
  c モスク  (信仰・学問・教育の場)・学院(d マドラサ )・e スーク (市場)、
  f キャラバンサライ (商人宿)、公衆浴場などが都市に設けられる。
   → イスラーム法に基づき、 ワクフ (寄付)によって運営された。
   → イスラーム帝国の成立によって整備された交通路により、遠隔地に伝わる。

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2.a 製紙法 :751年 b タラス河畔の戦い で唐軍の捕虜から学ぶ。
  → サマルカンド、バグダード・カイロなどに製紙工場建設。
  → イベリア半島・シチリア島を経て13世紀にヨーロッパに伝えられる。
3.a 神秘主義(スーフィズム)  
  10世紀 形式的な信仰を排し、アッラーとの一体感を求める思想。
   → 都市の手工業者・農民の間に広まる。
   ▲イラン系神学者b ガザーリー 、セルジューク朝ニザーミーヤ学院の教授を努め、
    後に神秘主義に傾き、諸国を放浪し、その信仰を理論化する。
  12世紀 以降多くの神秘主義教団が成立。・図と解説:

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ウ.学問と文化活動 用語リストへ
1.a 固有の学問 :基本はアラビア語の 言語学 とコーランの解釈から発達した 神学 法学
  イスラーム法( シャリーア )とその補助として、ムハンマドの伝承( ハディース )を研究。
    中央アジア出身の ブハーリー らがその編纂にあたる。
  イスラムの 歴史学
    タバリー  9世紀のイラン系神学者、歴史学者。年代記的世界史『預言者と諸王の歴史』を著す。 
   b イブン=ハルドゥーン 14世紀 『世界史序説』 を著す。
     都市と遊牧民の交渉を中心に王朝輿亡の法則性を探る。
2.a 外来の学問 :9世紀、b ギリシア の哲学・医学・天文学・幾何学・光学・地理学、
  などの文献がアラビア語に翻訳される。 → バグダードに「 知恵の館 」を建設。
3.科学:a インド から医学・天文学・数学の書物を学ぶ。
 → b アラビア数字 を考案。十進法とc ゼロの概念 を取り入れる。
    d 錬金術 ・光学などでの実験的手法がヨーロッパに伝えられる。
  e フワーリズミー (9世紀アッバース朝)代数学、三角法の創始。天文学の研究。
  f ウマル=ハイヤーム (11~12世紀イラン系)数学・天文学の研究、太陽暦( ジャラーリー暦 )の作成。
    文学者としては『g ルバイヤート 』(四行詩集)の詩人としても有名。
  ▲イドリーシー(12世紀)モロッコ生まれのアラブ人 ノルマン朝に仕え世界地図を作製。
  ★研究:西ヨーロッパの科学にイスラム文化が大きな影響を及ぼしたことをしめすことば
   にはどのようなものがあるか。
   h アルコール、アルカリ、アルケミー、アルジェブラなどの科学用語 

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4.哲学:ギリシアのa アリストテレス哲学 を研究 → 10世紀 神秘主義の影響受ける。
  ガザーリー 11世紀 ギリシア哲学に学び、合理的客観的なスンナ派の神学を大成。
  b イブン=シーナー (アヴィケンナ)  11世紀 医学者として著名。
    その著『医学典範』は16世紀までヨーロッパの医学校の教科書とされた。
  c イブン=ルシュド (アヴェロエス) 12世紀 コルドバ出身。アリストテレスの
    著作をアラビア語に翻訳。さらに後にラテン語に翻訳されロジャー=ベーコンの研究を刺激。
   → アラビア語の科学・哲学の書物は、 トレドの翻訳学校 でラテン語に翻訳された。
5.文化活動
 文学:a 『千夜一夜物語』(アラビアン=ナイト) 
     インド・イラン・アラビア・ギリシアなどの説話の集大成したもの。
     フィルドゥシー  『 シャー=ナーメ(王書) 』 ササン朝までのイラン民族の大叙事詩。
        ペルシア語で記す。
 旅行記:b イブン=バットゥータ  旅行記の 『三大陸周遊記』 を著す。 → ・地図と解説:
 モスク建築:ドーム(丸屋根)・c ミナレット (光塔)・ミフラーブなどをもつ。
       イェルサレムのd 岩のドーム (ウマイヤ朝)
 美術:e 細密画(ミニアチュール) 、金象嵌、
    f アラベスク (装飾文様)の発達。
 ★ イスラーム美術の特徴
  イスラーム文化では、創造的写実的な絵画・彫刻は発達しなかった。
  =理由:イスラーム教の教えではg 偶像崇拝をきびしく禁止 しているからである。
アラベスク

 アラベスク 模様の一例

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この節の小見出し
ア.イスラーム文明の特徴
イ.イスラームの社会と文明
ウ.学問と文化活動

目 次

序章 先史の世界

1章 オリエントと地中海世界

2章 アジア・アメリカの文明

3章 東アジア世界

4章 内陸アジア世界

5章 イスラーム世界

6章 ヨーロッパ世界の形成

7章 諸地域世界の交流

8章 アジア諸地域の繁栄

9章 近代ヨーロッパの成立

10章 ヨーロッパ主権国家体制

11章 欧米近代社会の形成

12章 欧米国民国家の形成

13章 アジア諸地域の動揺

14章 帝国主義と民族運動

15章 二つの世界大戦

16章 冷戦と第三世界の自立

17章 現代の世界