印刷 | 通常画面に戻る |

ベルエポック

ヨーロッパ、特にフランスにおいて、19世紀末から20世紀初頭の時代を、工業化を背景にした文明の進歩、文化と科学の様々な発展があった「すばらしい時代」として謳歌しした。第一次世界大戦の悲惨さを体験した人々が「戦前」を懐かしんで生まれた感傷(ノスタルジー)であった。

 ベルエポック Belle Epoque とはフランス語。ヨーロッパ、特にフランスの第三共和政の時代の19世紀末から20世紀初頭、第一次世界大戦が始まるまでの発達した資本主義のもとで大衆文化が花咲き、反映した時代を、大戦後に「古き良き時代」として懐かしんで言った言葉である。その始期は一般に、1870年代の半ばから続いた不況が終わった1890年代の後半から、第一次世界大戦開戦の1914年までとされる。
 この間の社会的変化としては、1896年の近代オリンピック競技会の開催され、スポーツが大衆娯楽の中で大きな存在となったことがあげられる。1900年にはパリ万国博覧会が開催(最初のパリ万国博覧会は1855年)され、その一環として第2回オリンピックが行われた。オリンピックが世界的に注目されるようになったのは1912年大会からといわれる。スポーツの他に、学校教育の普及、女性の社会的進出、などがこの時代の特徴としてあげられる。
 科学の急速な進歩は電気の急速な普及にも見られた。1900年パリ万博では「電気館」パビリオンが設けられ、エッフェル塔(1889年に建造)で初めて「エスカレーター」が登場した。
 芸術では、絵画での19世紀末から20世紀初めにかけて、印象派(ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌなど)からフォーヴィズム(ヴラマンク、マティスなど)とキュビズム(ピカソ、ブラックなど)が登場した時代であった。文学では19世紀の自然主義に代わって、象徴主義といわれるマラルメやメーテルリンク、イエーツ、リルケなどが登場、絵画のモローやクリムト、音楽のドビュッシー(印象派の音楽とも言われる)にも影響を与えた。ウィーンではリヒャルト=シュトラウス、マーラーなどが活躍した。
 この時代の文化運動として顕著なものがアール=ヌーヴォー(「新芸術」の意味。1897年のブリュッセル万博で、ベルギーの建築家・工芸家であるヴァン=デ=ヴェルデが提唱した)で、建築のガウディ、工芸のエミール=ガレなどが有名である。<福井憲彦『世紀末とベルエポックの文化』1999 世界史リブレット 山川出版社>