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ユトレヒト条約

1713年、スペイン継承戦争・アン女王戦争の講和条約。イギリスとフランス・スペインなどの間で締結された。フランス・ブルボン家フェリペ5世のスペイン王位継承は認められたが、イギリスが植民地を拡大し帝国形成の第一歩となった。

 主権国家を形成させたイギリスフランスの②国を対立軸として展開された、ヨーロッパでの覇権争いと英仏植民地戦争と連動した戦争が。スペイン継承戦争アン女王戦争であった。
 この両戦争の講和条約として、1713年に締結された講和条約がユトレヒト条約で、一方の当事者がフランス・スペイン、それに対してイギリスとその協力国であるオランダ、プロイセン、サヴォイア公国とのあいだで締結された。ユトレヒトはオランダの都市名。なお、この条約を保管するものとして、フランスとオーストリアは別にラシュタット条約を締結した。

ユトレヒト条約の要点

 その主な内容は次の通り。
  1. フランスとスペインが永遠に合同しない事を条件にフェリペ5世のスペイン王位継承を承認
  2. イギリスはスペインからジブラルタルミノルカ島を獲得、フランスからニューフアンドランドアカディア(ノヴァ=スコシア)、ハドソン湾地方を獲得
  3. オランダはスペイン領ネーデルラントの数市を獲得
  4. プロイセン公国は王号を認められる
  5. サヴォイアはシチリア王国を獲得(後にサルデーニャ島と交換、サルデーニャ王国となる)

ユトレヒト条約の狙いと意義

  • 狙い フランス(ブルボン朝)の力を抑え、その他の諸国イギリス・オランダ・プロイセン・オーストリア・スウェーデンなとの勢力均衡を維持することにあった。これ以降の国際関係においてはこの勢力均衡の維持が図られ、フランス革命及びナポレオンの登場によってこの均衡は破られるまで続くこととなる。
  • 歴史的意義 この条約の歴史的意義はイギリスが海外領土を拡大し、イギリス帝国繁栄の第1歩を築いたところにある。また、領土獲得にもまして歴史的意味が大きかったのは、イギリスが付帯条項としてフランス・スペインから、アフリカの黒人奴隷を新大陸のスペイン領に運ぶアシエント(奴隷供給契約)を譲渡され、かつ毎年五〇〇トンの船一隻を、貿易のためスペイン領アメリカに派遣する許可を取ったことであった。この結果、スペインのアメリカ大陸植民地支配は大きく後退することとなった。

ユトレヒト条約の付帯条約

 ユトレヒト条約が結ばれた翌年調印された付帯条約によって、イギリスはアフリカ大陸からアメリカ新大陸への黒人奴隷供給契約であるアシエントを承認された。これによって、以後30年間にわたり、毎年1000名の黒人奴隷をスペインのアメリカ植民地に輸出することができるようになった。イギリス王室はその権利を1711年に設立された南海会社に委託した。南海会社は西アフリカに船舶を派遣し、現地の王室アフリカ会社の代理人がそれらの船に奴隷を供給することが定められていた。
南海泡沫事件 このときイギリスで南海会社の株が高騰、それにつられて株式ブームが起き、実体のない会社の株が暴騰した。1720年、実体がないことが分かって大暴落、バブルが崩壊したこの事件は「南海泡沫事件」と言われている。泡沫会社はみな潰れたが、南海会社は黒人奴隷貿易などに事業をしぼって再建され、イギリスは、18世紀に本国・アフリカ・アメリカ大陸を結ぶ大西洋の三角貿易を行って巨利を得ることになる。 → 黒人奴隷

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